英語で、
水星はマーキュリー、
金星はヴィーナス、
火星はマーズ、
と表現されますが、これらはすべて、神話に登場する「神の名前」からきています。
水星や金星などの惑星は、星座など動かない星(恒星)とは、異なった動きをすることが、はるか昔から知られていました。
ほかの星々の間を、自由に移動するその姿から、ギリシャ語で「さまよう者」を意味する、「Planetes(プラネテス)」と呼ばれるようになります。
これが現在の、「惑星=Planet(プラネット)」につながっています。
昔は「さまよう者」と呼ばれていたんだ!
なのになぜ、神様の名前を持つようになったの?
不思議ですよね!さまよう者から神へと進化を遂げるなんて!
この記事では、惑星がさまよう者から神の名前を持つようになるまでの流れを紹介します。
惑星は「さまよう者」だった
現在、太陽系には8つの惑星がありますが、17世紀以前は、水星・金星・火星・木星・土星の5つだけが惑星として、認識されていました(地球も惑星として認識されていませんでした)。
地球が惑星として認識され始めたのは、1600年代にコペルニクスが「太陽が地球の周りを回っているのではなく、地球が太陽の周りを回っている」という地動説を唱えてからです。
天王星が惑星として認識されたのは1781年。天文学の発展と望遠鏡技術の発達により、イギリスの天文学者・ハーシェルによって発見されました。
海王星は1846年に発見されました。
水星・金星・火星・木星・土星の5つの惑星は、肉眼でも簡単に確認できたので、約5,000年前のはるか昔から、5惑星の存在は人々に知られていました。
「惑星」は、英語で「Planet(プラネット)」。
ギリシャ語で「さまよう者」を意味する、「Planetes(プラネテス)」から来ています。
なんで「さまよう者」なのかな?
水星・金星・火星・木星・土星の5つの惑星は、ほかの星(恒星)とは異なった動きをします。
常に天球上を動いている惑星に対し、宇宙空間に固定されているように見える星々を恒星といいます。
宇宙には、想像を絶する数の恒星が存在しています。
宇宙に存在する恒星の数は、数え切れません。
一説では、一つの銀河には、1,000億桁の恒星があると言われています。
そして宇宙には、この銀河がこれまた1,000億桁個あるそうです。
夜空を眺めると、ほかの星たちの間を行ったり来たりしているのがわかります。
ほかの星たちとは違い、ずいぶんフラフラしているやつだな〜。
夜空をさまよっているみたいだ。
このような動きが、昔の人たちの目には、夜空を「さまよう者」として映りました。
今でこそ、この動きの周期性や法則は確認されていますが、古代の人々からすると、なんとも特殊な動きをしているように見えたことでしょう。
星と星の間をフラフラとさまよっている、少し変わった星々(水星・金星・火星・木星・土星)を、「さまよう者(プラネテス)」と呼ぶようになりました。
これが、現在のプラネット(Planet、惑星)につながっています。
「神」の名前を得た惑星
あまり動きのないほかの星たち(恒星)とは違って、星と星の間を自由に行き来する惑星は、古代の人々にとって、わからないことだらけで不思議な存在でした。
占星術がギリシャに伝わると、古代ギリシャ人たちは
ほかの星の間を自由に移動するなんて、特別な天体だ。
なにか、見えない大きな力が働いてこの星(惑星)は動いているに違いない。
まるで神々の力が授けられているかのようだ。
と、考えるようになります。
現代ほど科学が発展していないため、昔の人々は、「わからないこと(自然現象など)は神になぞらえて捉えやすくする」ということを、よくしていました。
惑星も例外ではなく、「星間を自由に移動する特別な力を持った星(惑星)」は、時間の流れとともに、神格化されていきます。
人々は、光り輝く惑星の姿を、ギリシャ・ローマ神話に登場する神に重ね始めたのです。
古代ギリシャ人たちは、惑星の動きの特徴から、各惑星を、ギリシャ神話・ローマ神話に登場する、さまざまな神々に置き換えました。
星のあいだを素早く移動する水星は、伝令と商売の神・マーキュリー。
太陽に次いで明るい金星は、愛と美の女神・ヴィーナス。
燃えるように赤黒く光る火星は、戦争の神・マーズ。
星のあいだをゆったりと闊歩するように移動する木星は、神々の王・ジュピター。
5惑星で最も歩みの遅い姿を老人に見立てた土星は、尊老で農耕の神・サターン。
というように、神の名前が授けられました。
ギリシャ神話がローマに伝わり翻訳されたものを、ローマ神話と言います。ギリシャ神話とローマ神話では、登場する神の名前が異なっていますが、名前が違うだけで、同じ神様のことです。
たとえば、水星は英語表記ではマーキュリー、ギリシャ神話ではヘルメス、ローマ神話ではメルクリウス、と名前を変えています。名前がそれぞれ違いますが、同一神を表しています。
英語表記 | ギリシャ神話表記 | ローマ神話表記 | 該当惑星 |
マーキュリー | ヘルメス | メルクリウス | 水星 |
ヴィーナス | アフロディテ | ウェヌス | 金星 |
マーズ | アレス | マルス | 火星 |
ジュピター | ゼウス | ユピテル | 木星 |
サターン | クロノス | サトゥルヌス | 土星 |
詳しくはこちらをご覧ください。
さいごに
以上が、惑星が星と星の間を行き来するその姿を、「さまよう者」から「神」へと変えていくまでの流れです。
すごい出世だったね!
さまよう者から神へ変わってしまうだなんて!
大まかな流れをわかっていただけたようで、嬉しいです!
各惑星に「神話の神々」が重ねられると、次第に、惑星に神々の性質が色濃く反映されるようになっていきました。
惑星が、人格(神格?)を持ち始めるようになったのです。
これにより、各惑星には象徴するものごと・キーワードが割り当てられることになりました!
例えば、「水星はマーキュリーだからコミュニケーション能力を司る」、「金星はヴィーナスだから恋愛を司る」というように、象徴するものごと・キーワードが決まっていったのです。
そのため、天体の持つ神話を知ることで、天体の特徴がより一層理解しやすくなります。
天体の特徴だけ覚えてもまったく問題ないのですが、その背景にある神話も、軽く頭に入れておくと、理解が深まるかと思います!
各天体の神話はこちらからどうぞ!