ギリシャ神話の愛と美の女神・アフロディテ(ローマ神話におけるウェヌスに相当、英語読みでヴィーナス)は、金星を象徴する神です。
金星の天体としての特徴が、ギリシャ神話のアフロディテと似ていることから、金星=アフロディテ(ヴィーナス)という認識になりました。
アフロディテという名前は知らなくても、ヴィーナスと言われれば、多くの人が一度は耳にしたことがあるかと思います。
かの有名な「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスです。
金星といえば、ヴィーナス。
ヴィーナスといえば、「ヴィーナスの誕生」。
ですが、このヴィーナス(アフロディテ)が具体的にどんな神なのか、ご存知の方は少ないのではないでしょうか。
なぜ、ヴィーナスの誕生なのに、赤子ではなく、成人した女性なのか?
なぜ、貝殻の上に乗っているのか?
この記事では、そんな知っているようで知らないヴィーナス(アフロディテ)にまつわる神話をお伝えします。
愛と美の女神・アフロディテとは
アフロディテは男性器についた泡だった?!
ギリシャ神話におけるアフロディテの誕生秘話は、なんとも衝撃的です。
なんと、男性器にまとわりついた泡から生まれたのが、愛と美の女神・アフロディテ(ローマ神話のウェヌスに相当、英語読みでヴィーナス)。
尊老で農耕の神・クロノス(全知全能・ゼウスの父にあたる)は、その父、天空の神・ウーラノス(ゼウスのおじいちゃん)を、神々の王の座から引きずり落とすため、ウーラノスの男性器を切り落として海に捨てます。
海に捨てられた、ウーラノスの男性器にまとわりついた泡から生まれたのが、なんと、あの、愛と美の女神・アフロディテ(ヴィーナス)なのです。
ボッティチェリの描いた「ヴィーナス(アフロディテ)の誕生」
アフロディテは、泡の中で、スクスクと成長していきました。
そのため、1483年にボッティチェリが描いた「ヴィーナスの誕生(上図)」は、「誕生」であるのに、アフロディテ(ヴィーナス)はすでに成人女性の姿であり、海から上陸する構図になっているのです。
アフロディテの美しさに魅せられた、西風の神・ゼピュロスは、妻で花の神・フローラとともに、アフロディテをキュプロス島へと運びます。
ボッティチェリの絵を見ると、ゼピュロスが息を吹きかけて、アフロディテを運んでいるのがわかります(下の図をみてください)。
花の神・フローラは、誕生を意味する春の花をふりまいて、アフロディテの誕生を祝福しています。
キュプロス島にたどり着いた、裸体のアフロディテの身を包むため、季節と時間の神・ホーラが岸まで駆けつけます。
みんながアフロディテの誕生を祝福している様子が見てとれます。
愛と美がこの世に生まれる
アフロディテがキュプロス島に上陸すると、愛と美がこの世に生まれました。
このことから、アフロディテ(ヴィーナス)は、愛と美の女神として崇められるようになります。
アフロディテの結婚
愛と美の女神・アフロディテは、ヘパイストスという神と結婚します。
ですがこのヘパイストス、神々の中で一番のブサイクであったと言われています。
美を司る神が、どうして神々の中で一番の醜男(ぶおとこ)と結婚することになったのでしょうか?
ヘパイストスとは
ヘパイストスは、全知全能で神々の王・ゼウスと、最高位の女神・ヘラの間に生まれた、血統として申し分ない神様です(ゼウスの浮気に怒ったヘラが、一人で子供を作ったとも言われています)。
ですが、ヘパイストスは、生まれながらに両足の曲がった奇形児で、顔も醜かったそうです。
ブサイクに生まれたヘパイストスは、生まれてすぐに、母・ヘラから冷遇を受けます。
我が子の醜さに怒ったヘラは、生まれたばかりのヘパイストスを天から海に投げ落としました(ヘパイストスはその後、海の女神に拾われ9年間育てられ、最後は天へと戻りました)。
ヘパイストスの策略
手先が器用だったヘパイストスは、ある日、母・ヘラに宝石が散りばめられた「黄金の椅子」を送ります。
息子からの贈り物に、大いに喜んだヘラ。
しかしこれは、成人してからも母・ヘラから冷たくあしらわれ続けたヘパイストスによる、一世一代の罠だったのです。
黄金の椅子にすぐさま座ったヘラでしたが、座った途端、椅子に体を拘束されてしまいます。
体の解放と引き換えにヘパイストスが望んだのは、
神々の前でわたしがあなたの息子であると、あなたの口からきちんと説明しろ!
ということでした。
ヘラは条件を飲みましたが、それでもまだ信用できないヘパイストス。
さらに、わたしとアフロディテを結婚させるように!
と、条件を付け加えます。
神々への認知のみならず、愛と美の女神・アフロディテとの結婚も要求したのです。
ヘラはその条件を飲み(勝手に人の結婚を決めてしまうという凄さw)、なんとか解放してもらうことができました。
解放されたヘラはその後、約束通りアフロディテに「ヘパイストスとの結婚」をお願いしにいきました。
あまりに自分勝手なヘラとは言え、あの全知全能の神・ゼウスの正妻にあたる存在です。
そのヘラに頼まれれば、アフロディテも断ることができません。
こうして、神々イチの醜男・ヘパイストスと絶世の美女・アフロディテは結婚することになりました。
意外と浮気者
アフロディテは、愛と美を司る女神です。
ですが、愛とはいっても、「夫への一途な愛を貫いていた女神」というわけではありませんでした。
ヘパイストス(ゼウスとヘラの子供)という夫がありながら、アレス(同じくゼウスとヘラの子供)と浮気していたのです。
ヘパイストスとの結婚は望んだものではなかったので、しょうがないと言えばしょうがないのかも知れません。
神々の中で一番のブサイクであるヘパイストスと結婚した、絶世の美女・アフロディテが、神々で一番のイケメン・アレスと浮気をしていたというのは、なんとも皮肉なお話です。
アフロディテは、愛と美の女神でありながら、意外にも自分の女性性を優先させた神でもあったのです。
アフロディテ(ヴィーナス)が、愛と美だけでなく、女性性を司る神と言われるのは、このためです。
ボッティチェリの描いた「ヴィーナスの誕生」でも、アフロディテは、ギリシャ・ローマ時代には女性器の暗喩(メタファー)である貝に乗って登場しています。
さいごに
以上が、ギリシャ神話における「愛と美の女神・アフロディテ」にまつわる神話です。
絶世の美女であり、愛と美の女神でありながら、意外にも愛・本能に溺れる浮気者であったアフロディテ。
愛と美の女神と聞くと、純愛を貫いていそうなイメージがあったので、わたしはアフロディテの神話を知って、結構びっくりしましたw
その美しさがゆえ、多くの男の神を惹きつけたのでしょう。
このアフロディテの美しさと、夜空に輝く金星の美しさが似ているということから、昔の人々は、
金星には、アフロディテ(ヴィーナス)の力が授けられているに違いない!
金星=ヴィーナスだ!
と考えました。
そのため西洋占星術では、金星を見ることで、ヴィーナスの特徴が反映された、あなたが好きなこと、美意識、恋愛運、恋愛の仕方などがわかるとされています。
アフロディテの出生から、愛と美の女神と呼ばれる理由までをざっくりまとめました。
アフロディテの特徴がわかってから、西洋占星術における「金星」を見ると、理解が早いかと思います♪